2020年、教育分野は学校の閉鎖に伴い新しい形を求められ、多くの学生と教員が従来の教室での学習からデジタル配信によるライブストリーミングの授業へと変化を強いられました。それ以前は、Edtechの主な基盤は大規模公開オンライン講座(MOOC=Massive Open Online Course)や録画による講義などで、学校での成績を上げるため、CourseraやKhan Academy、Crash Courseなどが世界中の多くの学生たちに利用されていました。
ライブ配信による講義は、MOOCと比べて教室での授業とオンラインラーニングの距離を縮め、学生と教員の交流や関わりを積極的に促進するため、学生が授業に「ついて行きやすく」なることがメリットの一つだといえます。デジタル配信による学習は日に日に日常的な光景となり、投資家にとっては最も注目すべき市場でしょう。無料トライアルによるマーケティングやデジタルマーケティングを通じて、アジア太平洋地域、特に中国では、Eラーニングプラットフォームがパンデミックの最中から大きな躍進を見せています。
中国でもEdtech市場が活況
アジアの家庭では、子供の教育に多くの金額を費やしています。中国では一人っ子政策により、多くの家庭が持てるものすべてを子供の将来に注いできた家庭が大半で、多くの場合は家庭の出費のうち46~52%が子供の教育に投資されています。特に、小学生の60%以上は学校以外に個別指導を受けています。米国教育協会の調べでは、中国の家庭では子供の個別指導クラスに平均12万元(17,400米ドル)を費やしていることが分かっています。
中国が世界最大のEラーニング市場であることは間違いなく、ステイホーム期間中は毎日5,000万人以上の学生が個別学習を行っていました。Zuoyebang、Yuanfudao、Youdaoのような多くのEdtech大手企業がライブストリーミングによる無料学習コースをDouyin、Watermelon VideoやBilibiliなどのソーシャルメディアで宣伝し、多くのユーザーを獲得しています。中国教育業界のレポートによると、2021年の第一四半期、Douyinの教育関連のアカウントは3,000に達しました。また、ライブ配信による授業のトレンドに乗ったYuanfudaoはTencentが主導する22億ドルのラウンドを発表し、企業価値評価は155億ドルに。名実ともに世界で最も価値のあるEdtech企業となりました。Yuanfudaoだけでなく、他のEdtech大手企業も2022年にIPOを計画しています。
「熱い」東南アジア市場
香港やシンガポールのような規模の小さい国も、中国に追いつく勢いを見せています。香港最大のテレコム企業の一つであるChinamobileは、学校と提携し、UTVアプリを使用した無料のライブ配信コース(Syncクラス)を小学生向けに提供しています。有名な教師やAIをベースにしたインタラクティブなコースやスタディレポートを組み込み、包括的な学習体験を提供していることが特徴です。また、香港を拠点とする教育スタートアップ企業のSnapdeskは、メインストリームの投資家以外から5,000万ドルを調達し、香港、台湾、マレーシア、インドネシア、タイ、日本、韓国において300万人以上の学生にサービスを提供しています。これは、利用者がチューターセッションの間に1ヶ月60個までの質問ができる自己管理的学習に特化したオンデマンドによるチューターアプリです。
香港と同様、シンガポールの企業も現地の需要のみに対応するだけではありません。東南アジアの金融ハブであるシンガポールのTemasekはすでに大きなチャンスを見抜いており、インドを拠点とするEdtechプラットフォームのupGradと中国のオンラインラーニングアプリYiqizuoyeに資金投資し、その地理的範囲を拡大しようとしています。
教育は遠距離にシフトしていき、ライブ配信によるEラーニングは未来の学習スタンダードとして発展し続けるでしょう。急成長を見せるEdtech企業は、現在のトレンドを活かし、ソーシャルメディアやフリートライアルによるマーケティングを通じてその役割を強化しています。この流れは、パンデミックが終わった後も止まることはないといえます。
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