世界貿易の約9割を担う海事産業は、クレーンなどの荷役機器を人間が手作業で操作することに大きく依存しています。昨今、パンデミックの発生によるロックダウンや最終目的地の制限により、膨大な量の貨物の遅延、陸揚げ、ルート変更が発生し、世界のサプライチェーンに影響が生じています。また、国内の物流網が寸断されたことで、コンテナの量や船の待ち時間が急激に変動する、納期に間に合わない、荷役費が高騰するなどの弊害も発生しています。これに対する解決策としては、何が考えられるでしょうか?可能性としては、産業用IoT技術、アルゴリズム、ブロックチェーン技術などを駆使して「スマートポート化」(港湾オペレーションをデジタル化すること)を図ることが、海運業界の将来の課題に対する勝利の方程式となるかもしれません。
5G+スマートポート
今や、様々な伝統産業が5Gのインターネットを用いてビジネスをアップグレードし、最適化することの可能性を見出しつつあります。5Gの登場により、商品や情報の効率的な移動を促進するために必要なあらゆる手段が実現できるようになりました。スマートポートはデジタルトランスフォーメーションのアイデアを取り入れ、中央集権的な遠隔制御システムを使用することで港湾交通の効率と効果を高めています。
世界最大のコンテナ港である上海港では、革新的なアプリケーションを採用してすでに4,000万個のコンテナを処理し、処理能力は1,300万TEUに達しています。スマートポート技術のリーダーとして、上海港は将来の中国のスマートポート開発の基礎となる12の海事基準を制定しました。上海港はまた、5.8GHzのLTEネットワーク技術と高度なワイヤレス・スケジューリング・アルゴリズムによって運営される世界最大の自動化コンテナターミナルとしての地位を確立しています。その最高レベルのパフォーマンスにより、近い将来、エネルギー消費量を70%削減し、ゼロエミッションのターミナルを構築することを目指しています。
スマートモニタリング
もうひとつ注目すべき技術がスマートセンサーです。スマートセンサーはターミナルを効率的に管理するためにすべての関連データを自動で収集することを目的としており、スマートポートのデジタル化を進める上で重要な鍵となります。港湾局やターミナルのオペレーターは、スマートセンサーから提供される情報を頼りにしてオペレーションのスケジューリングやモニタリングを行います。センサーは鉄道、橋、道路に組み込まれ、データベースの広範なネットワークを構築しています。このようにして得られたデータにアルゴリズムを適用することで、システムは瞬時に交通の妨げとなる箇所を特定し、適切な措置を講じてビジネス全体の効率性を高めることができるのです。
産業界の生産性が向上するということは、それだけオペレーションコストが下がるということです。特に人件費が高い国では、スマートセンサーへの投資効果が短期間で明らかになることでしょう。スペインのバレンシア港を例にとると、200台のクレーン、トラック、フォークリフトにセンサーベースのネットワークを導入した結果、オペレーションコストが10%縮小しました。信頼性の高いモニタリングシステムにより、貨物の積み込み、送り出し、輸送の自動化を促進することで、倉庫の物流や在庫管理を改善することができます。このような技術の登場を経て、最終的には「効率性」という言葉の意味も次第に変わってくるのかもしれません。
海事の歴史にマイルストーンを刻む
世界をリードするデジタルインフラに支えられ、港湾技術は今後ますます発展していくことでしょう。2026年までに、スマートポート市場は51億米ドルに達すると予測されています。特に、アジア太平洋地域はスマートポート市場の中で最も急速に成長している地域の一つです。デジタル化の時代には、大規模な自動化によって港湾の効率を高め、環境への影響を最小限に抑え、さらに業務能力を強化することが求められています。
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